うどん

余計なことを言うな

2回目

名前、住所、電話番号などを書いて判子を押してもらったのは婚姻届じゃなかった。そのときわたしはまだタバコを吸っていた。灰皿が吸い殻まみれだった。何かお酒を飲んでいて、気持ちを落ち着かせようとしていた。頼んだのはわたしだったけど、動揺しているのを隠そうとしていた気がする。嫌な方向に人生の選択肢が広がったときだった。

 

ずっと家に置いてあった離婚届のことを考えていた。

どれだけ眠っていたかわからなかった。点滴を打たれた腕に肌色のシールが貼られていた。

踵の低いブーツは、皮が硬くて履いたり脱いだりがやりづらかった。

その日は、テキーラを飲めなかった。

 

歳取れば自動的に幸せになれると思ってたし、毎回「こんどこそ」と思っていたんだよね

夢をみることのできる最初の一瞬だけが楽しくて幸せだったんだよね

 

なんだってできると思えた高揚感が、たまらなかった

 

もう会わないと思ってたよー

え、なんで?

だってさあ…

 

女の子にさーそういうこと聞かないでよ

 

もう一回?

 

ホテルの洗面台、ユニットバス

タバコを吸ってる男は女を殴る

一緒にいる時が1番かわいい自分でいられると思っていたはずなのに

あと何回同じことをするのかなー

いつも今回が最後だと思ってるけど

 

 

おわり