うどん

余計なことを言うな

明日から子ども

お金があれば幸せになれると思っていた。なんでもできると思ってた。でも全然そんなことなかった。

今まで信じて疑わなかったことが、それを持つことによってわたしの世界の常識は崩壊をむかえていた。つらい。

 

そりゃどうにかなることだって少なくは無いけど、金だけあったってどうしようもない。

ただもうどうしたらいいかわからないから、なんとなく事実から目を背け続けている。

 

水族館も、ドバイも本当は一緒に行けなくてもよかったのかもしれない。

宝くじみたいに、当たった時のことを考えるのが幸せだったり、旅行の計画を立てているのが楽しかったり、そういう感覚だったのかも。

どうせ叶いもしないし、もう覚えてもいないだろう。わたしは覚えてるけど…。他愛のないおしゃべりが嬉しくて仕方なかった。あのときが、人生で1番きらきらしていたかもしれない。

あの日、時間が経っていたことに気づかなかったら…シャワーの温度が上がるのが遅かったら…

 

いつだって助けて欲しかったし、放っておいて欲しかった。

 

その日はもう初めから泣きたくてしょうがなかった。好ましくない連絡は来るし、帰るのは遅くなるし…。

愛想良くしてたけど、本当は少しイライラしてた。

 

 

怖い人に見える?めちゃくちゃいい人そうでしょ!

えー、でも、いい人そうだから怖いじゃん?服脱いだら、お尻まで墨入ってるかも。

あーたしかに。優しそうな人ほど怖いっていうしね。

お尻にタトゥー入れるのめちゃくちゃ痛いらしい…。

 

 

服が汚れちゃうとわたしが言っても変わらなかった。地味な色の生地の、ワンポイントのある胸元のところには落ちた化粧と涙の跡がついていた。

この先、昔みたいにだんだん思い出も淘汰されていくだろうけど、悲しさまで抱きしめてもらえたような気がした瞬間は、きっとずっと忘れないんだろう。それだけが救いだったよ。

 

 

おわり